『光子の裁判』

 戦後まもなく世に出た裁判劇がある。光子という被告が裁かれる話なのだが、彼女の言い分はどうみてもこの世の真実とは思えない。。。
 さて、みなさまは被告「光子」をなんと読まれただろうか。そう、「みつこ」と呼ぶことを作者は期待していたふしがある。しかし、ことによって「こうし」と読んだ方もいるかもしれない。
 この本のエスペラント版が出たときのタイトルは"Fotono ĉe Juĝejo" であり、訳者はどうしても主人公をfotono/光子(こうし)としか訳せなかったことを残念がっている。
 実は、これは、後にノーベル物理学賞をもらうことになる朝永振一郎(ともなが・しんいちろう)が、光子のもっている二重性(ondo/波であると同時にpartiklo/粒子である)を説明するために書いた啓蒙科学書である。訳書は1953年に出た。今でもエスペラント界の古本市などで出てくるかもしれない。30ページほどの本である。