日本語起源のエスペラント(2)-1933

1933年収録の単語

12月25日の本欄の続きである。「エスペラント/Esperanto-Lernanto」誌の1933年3月号で、岡本好次(おかもと・よしつぐ)が「エス語へ入った日本語」を書いている。そこに取り上げられたのは13語でありエスペラント辞書に入った経緯などが考察されている。ここで、そこに出ているそのままの形で単語と日本語訳を掲げて、コメントを加える。

  • bonzo / 坊主、僧侶

 現在のエスエス辞典PIVでは evitinda/避けるべき語、となっていて、budhana pastro/仏教僧 という言い方を推している。

  • daimio / 大名

 ここでLeonegoさん(日本の人ではない)の一茶(いっさ)の句の訳を紹介しよう。

 大名を馬からおろす桜哉
 La daimio
 deviĝas de ĉevalo --
 sakurgracio!   (Issa)

  • gejŝo / 芸者

 岡本氏は、gejŝoを男性として、女性のいわゆる芸者をgejŝinoとすることを提案したが受け入れられなかった。

  • ginkgo / 銀杏(いちょう、ぎんなん)

 学名はGinkgo であるが、今ではもっと言いやすい ginko の形が普及している。

 自動詞として登録されている。あるところで、「髪を得る=har-akiri ではない」とことわりがあった。

  • ĵinrikŝo / 人力車

 PIVでは rikiŝo という語形を勧めている。日本だけでなく、「en rikiŝo mi serĉis ĉambron en Manilo/マニラで人力車に乗って部屋を探した」、「en hinda urbego, ... veturistoj de rikiŝo .../インドの大都会で・・・人力車の車夫が・・・」などという最近の文例がある。

  • kimono / 日本服

 PIVでは「和服」だけでなく、そでがゆったりとした寝巻き(ネグリジェ)も指す、としている。

 現代では tennoo/天皇 もある。しかし、私はどちらも(japana) reĝo/日本国王 で十分でないかと思っている。

  • mokso / 艾(モグサ)、灸

 「灸(きゅう)」の方はkaŭterizo で、その物質のひとつがmokso とするのが妥当と思う。

  • samurajo / 武士

 岡本氏も指摘するよう、samurajismo/武士道 という派生ができる。

  • sojo / 醤油

 そして「大豆」のことをsojfabo(直訳すると「醤油豆」)が一応合意されている解釈である。一方、sojo/大豆、sojsaŭco/醤油 という解釈もあるが、少数派か。最近では gene modifitaj semoj de sojo/遺伝子操作を受けた大豆の種子 などという用例もある。

 ŝintoa sanktejo/神社、ŝintoa pastro/神官 などと派生して使う。

  • ŝoguno / 将軍

 PIV ではŝogunoを1186年から1868年までのefektiva regnestro/実質的な国の支配者、としてmikado/帝 をnominala 名目的、と説明している。

岡本好次

岡本好次(Okamoto Joŝicugu, 1900-1956)は1926年に「新撰エス和辞典」を出し、後の1935年には「新撰和エス辞典」をだしている。執筆当時、日本エスペラント学会(JEI)の書記長であった。後日、別途とりあげたい。